Christmas Date

「いくらするんだ。この部屋」
カラスは、目の前の部屋の広さと豪華さにため息をついた。
ここは、都内シティホテルの最上階スィートルーム、クリスマスイブのそのまた前日の土曜日にフクロウが予約した部屋だ。
「いったい何時から予約してたんだろう」
エントランスを抜け、リビングのソファにコートとカバンを置き、改めて部屋を見回す。
ドアを開けると、隣がベッドルームで、大きなダブルベッドが二組置かれている。
(一泊するのに、こんな広い部屋いらないよなぁ)
ドアを閉め、もう一つのドアを開けると、洗面所があり、そこからトイレとバスルームに繋がっている。
「はぁ…」
一通り見て回ると、カラスは手持ちぶさたにソファに腰掛けた。


「23日の土曜は絶対空けておけよ」
ずいぶん前から、フクロウに念を押されていたのだが、ただでさえ、忙しいカラスの部署は、年末は輪を掛けて忙しい。
結局12月の休みをほとんど出勤して、仕事をこなし、それでも間に合わず、先程まで仕事をしていてフクロウに迎えに来られたのだ。
会社から、フクロウの車でここのホテルに直行し、チェックインを済ませたところで、今度はフクロウに仕事の呼び出しが入った。
携帯電話の呼び出しに、渋い顔で答えると、フクロウはカラスの手にカードキーを握らせ、「すぐ戻るから、フロにでも入って待っててくれ」
と言い残し、出かけていったのだ。


フクロウは自分の分のキーを持っていったので、彼の言うとおりフロにでも入ろうかと腰を浮かせると、部屋のチャイムが鳴った。
もう帰ってきたのかと、ドアを開けると、ボーイがワゴンを携え、佇んでいる。
「ルームサービスのお届けです」
カラスは、そういえばフクロウがそんなことも言っていたなと思い、ワゴンをもらいドアを閉めた。
ワゴンには、シャンパンとグラス、つまみのたぐいとサンドイッチが乗せられていた。
クリスマスに、ホテルのスィートに泊まりシャンパン。
フクロウは、そういうところは、何かとミーハーだなぁと苦笑が漏れる。
カラスはその手の行事にまったく興味が無いが、フクロウはやれ誕生日だなんだと気に掛ける。
そういう時の、フクロウのはしゃぎ振りが、なんだか微笑ましくて、カラスは結局フクロウにつきあっているのだった。
サンドイッチは、夕飯を食べていない自分への気遣いだろう。
ありがたく頂くことにして、カラスは部屋に備え付けのポットでお湯を沸かし、コーヒーを入れると、サンドイッチに手を伸ばした。


「ふう」
サンドイッチをたいらげ、フロに入り一息つく。
フロも広々として、シャワールームが別になっている。
(これだけ広かったら、足をぶつけずにできるよな)
カラスはそんなことを考えて、自分の考えに赤面する。
フクロウの部屋で何度かフロで行為に及んだ時を思い出してしまったのだが、こういう場所ですることが、当たり前になっている自分の考えに羞恥が募る。
(俺はバカか…)
なんだか落ち着かなくなって、フロもそこそこに切り上げた。
バスローブに身を包み、寝室に行く。
窓側のベッドに腰掛け、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを飲みながら外を眺める。
向かいに同じ高さの建物が無いせいか、夜景が美しい。
部屋の灯りを落とし、ぼんやりと夜景を眺めていると、こんな日に、こんな場所に一人でいるということに、無性に寂しい気持ちが沸き上がってくる。
(フクロウ…まだ仕事が終わらないのかな…)
そのまま、ベッドに横になり外に目をやる。
ほどよい空調と、柔らかなベッドに仕事の疲れが重なり、カラスはあっという間に眠りに落ちていった。



「ま、予想はしてたけどな」
フクロウはくわえ煙草でベッドで眠るカラスを見下ろした。
仕事の合間に何度か携帯を鳴らしたが、出る様子がない。
何事かあったのかと、気が気ではなく、とにかく、あとは月曜日にと、仕事にきりをつけてホテルに戻った。
念のためチャイムを鳴らすが返事はなく、部屋に入ると、リビングにカラスの服が脱ぎ散らかされており、当の本人はベッドで爆睡中だった。
フクロウはカラスを起こそうかとも思ったが、気を変えて、リビングからワゴンを持ってきてベッドの横につける。
上着とネクタイを取り、シャツのボタンを外し、カラス眠るベッドの縁に腰かけると、シャンパンをグラスに注ぎ、カラスの顔を眺めながら一息に飲み干す。
「こういうのも、おつだよな」
苦笑混じりに言うと、再びシャンパンを注ぐ。
暗い部屋で、夜景の灯りがぼんやりと部屋の中を照らす。
フクロウは身を屈め、夜景に照らされたカラスのこめかみに軽いキスを落とす。
髪を優しく梳きながら、こめかみから頬、唇にキスを落としていく。
「ん…う」
カラスが身じろぎに、ゆっくりとまぶたが開いた。
「……あ、フクロウ…」
まだ、意識がはっきりしていないようで、ぼんやりとカラスが言う。
「よう、待たせたな」
言いながら、フクロウは唇を塞ぐと、今度は舌を差し入れ濃厚な口づけをする。
「んぅ……ぁ」
今度ははっきりと目が覚めたようで、カラスはフクロウを見ると、うれしそうに笑った。
「お疲れさん」
「おう」
答えるフクロウも笑みを浮かべ、ベッドに上がると、カラスの身体を抱きしめながら、口づけた。
「…ふぁ…んん…ぁ」
眠りの熱が身体に残るカラスは、その熱がそのまま情交の熱へと変わっていくのを感じていた。
「あ…フクロウ…」
自らフクロウの背中に腕を這わせ、身体を密着させる。
腰を押しつけ、互いの性器を摺り合わせるように動く。
「カラス…」
フクロウは、積極的なカラスの様子に目を細めると、ワゴンの置いたグラスに手をやり、シャンパンを口に含み、カラスに口移しで飲ませた。
「んん!」
カラスは飲み込んだものの、炭酸にむせて咳き込む。
口の端から飲み下せなかったシャンパンがこぼれ落ち、首筋を伝い流れていく。
フクロウは零れた液体を、舌で舐めながら、その上からシャンパンをカラスの首元に零していく。
「…ぁ」
シャンパンの冷たい感触と、炭酸の刺激に肌が粟立つ。
カラスの身体に零した液体を舐め取りながら、フクロウは少しずつ、再びシャンパンを零す。
バスローブをはだけさせ、顕わになった胸の尖りを濡らす。
「!」
敏感な尖りは、炭酸の刺激に色を濃くして立ち上がる。
ピチャピチャと、わざと水音をさせて、フクロウは尖りを舐め、啜る。
「あ…や!」
カラスは顔を紅潮させ、息を荒げている。
先程少し飲ませたアルコールが回ってきているようだ。
両方の尖りを丹念に嬲ると、今度はフクロウは下肢にシャンパンを垂らしていく。
下腹からへそのあたりを、液体を啜りながら、舐め下ろす。
カラスの性器は、すでに屹立し先が濡れ始めていた。
「女なら、わかめ酒ってとこだけどな」
フクロウは笑いながら言うと、震えるカラスの性器にシャンパンを注いだ。
「あぁ…!」
カラスの身体が跳ね、液体が飛び散る。
フクロウは根元から舌を這わせ、注いだシャンパンを飲み干していく。
ぐっしょりと濡れた茂みに指を絡め、ゆるゆると梳き立てていく。
「ひぁ…あ…やぁ」
炭酸の刺激は、性器には強すぎるようで、カラスは泣きながら身を捩る。
「や…フク…ロ…ぁ…」
性器の先からは、透明な液体があふれ出て、シャンパンと混じる。
先走りと混じり合った酒精をすべて舐め取ると、フクロウはカラスの性器を口に含み、強く刺激を与えた。
「いぃ…い…あ!」
堪らずカラスは、白濁した液体を放った。

仰臥したまま、ぼんやりと目を開けると、カラスの精はほとんどフクロウが飲み込んだようだったが、顔にも精液が飛び散っているのが見えた。
「…」
カラスは荒い息をつきながら、ノロノロと身を起こす。
「良かったか?」
にやにやと笑いながら、フクロウが言うのに、赤い顔を更に赤らめると、
「悪趣味」
と零し、彼の頬に手を伸ばした。
「…」
カラスは、フクロウの頬についた自らの精を舐め取っていく。
懸命に、舐め取る様子が可愛くて、フクロウは顔を曲げると、カラスに口づける。
「…ん」
起こした半身を抱き寄せ、双丘に手を伸ばし、その狭間に指を差し入れた。
「あぁ…ん」
カラスの身体が仰け反り、内壁が指を奥へと誘う。
酒精のせいか、いつもより柔らかく解れていく。
「ぁ…はぁ…ぁ」
カラスはフクロウの首に縋り付き、甘い声を漏らし、その声に煽られ、フクロウは自らの性器が堅く張りつめていくのを感じていた。
「カラス…」
フクロウはカラスの耳に囁くと、身を離し、仰向けになる。
カラスは、フクロウの意図を悟り、フクロウのズボンをくつろげると、屹立した性器を取り出し、柔らかく握る。
「…」
カラスは、すっかり堅く勃ちあがったフクロウの性器に、自らの内部が快感の予感にざわめくのを感じ、喉を鳴らした。
フクロウの上に跨ると、ゆっくりと、性器の上に腰を下ろしていく。
「あ…ぁ」
カラスは辛そうに眉を潜めながらも、その顔には確かな快感の色があり、フクロウを受け入れていく様はひどく淫靡で、フクロウは自らのモノが、さらに大きさを増すのを感じた。
「…!うぁ…ぁ」
カラスは身を仰け反らせて、フクロウをすべて飲み込んだ。
「あぁ…は…」
カラスは手を身体の後に付き、腰を少し前に突き出すようにして息を荒げていた。
彼の性器も再び頭を擡げ、震えている。
本人はそうとは思っていないだろうが、扇情的な格好にフクロウは堪らず、カラスの腰を掴み突き上げた。
「あぁ!」
カラスは慌てて、フクロウの腕を掴み、仰け反る。
「ふぁ…あ…いぁ」
カラスは揺すぶられながら、あっという間に快感に飲み込まれる。
「いぃ…フクロ…あ」
快感のまま、自ら腰を上下させるカラスは、それだけでも十分蠱惑的だが、外からのぼんやりとした灯りが、カラスの白い姿態に陰影を付け、更に淫靡な雰囲気を濃くしていく。
「あぁ……ぁ!」
やがて、限界を迎えたカラスが達し、大きく仰け反り性器が弾けた。
フクロウもまた、自らの滾りをカラスの内部に解き放った。
「はぁ…は」
カラスはフクロウの胸に倒れ込むと、荒い息を吐いている。
フクロウは、カラスの身体を抱きしめると、そのまま身体を入れ替え、カラスを組み敷く。
「今日は寝かさないぞ」
息のかかる距離で囁くと、カラスは一瞬目を見開いたが、返事の代わりに笑みを浮かべて、フクロウに口づけた。




「だから、俺が抱いていってやるって言っただろう」
車の助手席に息も絶え絶えに座り込んだカラスに、フクロウが言う。
「やめてくれよ」
カラスは顔を顰めた。
ただでさえ、クリスマスにホテルのスィートルームから男二人で出てくるなんて恥ずかしいことこの上ないのに、その上、フクロウに抱きかかえられるなんて、絶対にごめんだった。
大体、カラスの腰が立たないのは誰のせいなのだ。
クリスマスだしと思って、フクロウの好きにさせたが、まさか本当に朝方まで抱かれるとは思わなかった。
よくあれだけ、スタミナが持つと感心するが、それ以上に自分のダメージは深刻だ。
立ちあがるのも大変な上に、座るのも痛い。
助手席でも前を向いて座れず、横を向いてしまった。
「ま、今日はうちでゆっくり寝とけよ」
フクロウは上機嫌でハンドルを握ると、キーを回す。
「…」
だったら初めから、フクロウのうちでも良かったんじゃないかとカラスは思うのだが、今は口をきくのも億劫で目を閉じた。
(明日、会社行けるかなぁ)
カラスの不安を余所に、フクロウは車を発進させる。
クリスマスイブの喧噪の町中を車は走りさっていった。



えーと、いつものセクハラシリーズのバカネタその2です。
クリスマスなので、クリスマスHを〜と思ったんですが、クリスマスはホテルのスィート!というのは、やはり五里さんの発案です(笑)。シャンパンはあたしですが(^^; やっぱりこの二人はバカップルという感じで書いてて楽しかったですv