ceremony



「全員、帰還した」
竜騎兵指揮官であるクイナの声が響く。シャングリラ遊撃艇との戦闘を終えて、竜騎兵達が返ってきたところだった。
「……」
今日の戦闘は、一人も欠けることなく、遊撃艇を撃退することができた。だが、それを一々喜ぶものなど居ない。
慢性的に続くシャングリラの浸食は、いつ終わるとも知れず、竜騎兵達は戦闘の度に極限まで力を出し切り、時には命を落とす。
今回は無事だったが、次もそうである保証はどこにもないのだ。
皆疲れ切った身体を引きずり、少しでも休息を取るために自室に戻っていく。
カラスもゆっくりと、皆のあとについて行く。
 「カラス」
先に行ったと思っていたフクロウが、自分を待って声をかけてきた。
カラスが無言でうなずくと、フクロウは少しばつの悪そうな顔をしながら、並んでカラスの部屋へと入った。




戦闘の後、こうしてフクロウと閨を共にするようになって、ずいぶん経つ。

まるで何かの儀式のようだ。

カラスはフクロウに抱かれながら、ぼんやりと思った。

狭い部屋の明かりは落とされ、ただ貯水漕の明かりだけが青く灯っている。
その暗がりの中、カラスは寝台の上でフクロウに組み敷かれていた。
ゆっくりと唇を吸われ、口腔内を舌で犯される。
「ん…ふ」
舌の触れあう水音が、静かな部屋に響く。
「あ…」
フクロウは、そのまま唇をずらし、首筋から鎖骨へと舌を這わせる。
息が上がってきたことを自覚して、カラスは両腕で自分の顔を覆う。
もう何度となく身体を重ねてきたのに、未だにカラスは行為そのものに慣れることができないでいた。




そもそも、なぜフクロウが、自分とこんな行為をするのか、カラスにはよく分からなかった。
ただ、この行為は自分にとって、ハルカのことを忘れていられる時間であった。
ハルカを失った日から、カラスが彼女のことを思い出さない日は無かった。
眠りのなかでも、ハルカとの別れが繰り返され、泣き濡れて目覚めることも少なくなかった。
フクロウとの行為に没頭し、疲れて眠るときだけが、悲しい夢を見ずにすむのだった。
だから、フクロウは俺と寝るのかもしれない。俺が夢を見ないで済むように。
そんな風に思えて、カラスはフクロウの求めに応じているのだ。




フクロウは唇を滑らし、胸の突起に口づけそのまま口に含む。
舌先で転がしてやると、堅く芯をもってくる。
片手でもう一方の突起をつまみ上げ、押しつぶすように捏ねまわす。
「……っ!」
カラスは、背骨からぞくぞくとした快感が昇ってきて、身体が震えだすのを感じた。
胸への愛撫を続けながら、フクロウは空いた片手をカラスの下腹部へ這わせる。
すでに立ち上がりかけていた、カラス自身を握り込むと、そのままゆるゆると梳きあげる。
カラスの身体がびくびくと震え、手の中のものがたちまち張りつめて雫をこぼし出す。
「あっ…ぁ!」
フクロウは、少し身体を離すと自分の指を口に含み、たっぷりと唾液で濡らす。
その指をカラスの窄まりにあてがい、ゆっくりと差し入れた。
「…っ」
すでに慣れた行為とはいえ、やはり最初は堅くこわばっている。
濡れたカラス自身への愛撫を続けながら慎重に奥を探り、抜き差しを繰り返してやると、だんだんとやわらかくほぐれてくる。
指を増やし、広げるように動かしてやると、内部の動きが、指をくわえ込むように動き出す。
「は…」
まだ指を入れられただけだというのに、自らの身の内の熱はいかんともしがたくなってきているという事実が、カラスを追いつめる。
「フクロウ…」
自分でも信じられないくらい甘い声が喉から出ていく。
「カラス」
答えるフクロウの声も甘く、幾分かすれて響く。
フクロウは指を引き抜き、すでに堅く屹立している己をカラスの奥にあてがうと、そのまま貫いた。
「―!」
衝撃に、カラスの口から声にならない悲鳴があがる。
かまわず、フクロウは細い腰を引きよせ、根元まで納めると息を吐いた。




カラスは荒い息をはきながら、必死に耐えていた。
彼が耐えているのは、挿入の痛みではなく自身に降りかかる快感だった。
彼がこの行為に於いて、もっとも慣れないのが、快感に身を任せることだった。
じきに、もっと激しい快感にこんな思考など吹き飛ばされてしまうことは分かっていたが、それでも、自らの意志でそれに身を任せるというのはできないのだ。




「あっ!あぁっ!」
カラスの腰をささえ、足を抱え上げると、フクロウはゆっくり動き出す。
最初から、カラスの一番弱い部分を狙い突き上げる。
「はっ…あ…あぁ!」
あっという間にカラスの思考は押し流され、ただ快感をむさぼるだけになる。
「フク…ロ…」
溺れるもののように腕をのばし、カラスがしがみついてくる。
「…い…あ」
必死で快楽を拒むようなカラスの姿は、一種禁欲的で、フクロウを煽り立てる。
だからこそ、何もかも忘れて快感に身を任せる姿は、さらに彼の雄を煽る。
「…カラス」
フクロウも、自身の衝動に身を任せ、カラスの身体を激しく揺さぶった。
「…っイサミ!」
カラスの身体が、大きくしなり、しがみついた指がフクロウの腕に食い込む。
瞬間、互いの身体の間でカラス自身が白濁した液体を放つ。
「ぐ…」
きつく引き絞られる感覚に、フクロウも己を解放した。そのままカラスの上に倒れ込む。
薄暗い部屋に、二人の荒い息使いだけが聞こえていた




こうして、抱き合うことで、お互いの生を実感する。
戦いの熱の余波を相手に向け、快楽を貪りあう。繰り返し、何度も。

これはそうした儀式なのだ。

身体の上の、男の重みを感じながら、カラスはぼんやりと思考を巡らす。

自分にとっては、すべてを忘れるための…。


えーと、これは3/26の大阪コミックシティで無料配布した小説本に載せたものです。無料配布だから、web再録してもいいかなーと。配布の冊子には、五里さんのカットがついてるので、一応そっちがお得な感じということで(笑)。
人生二作目の小説です(^^;(一作目は他ジャンルです)とにかく、フクロウ×カラスのエロ小説が読みたくてねー。結局自分で書いちゃったんですね。でもできれば人のが読みたい…。